4児の母が作る優しい身近なスコーン屋 つむぎの1日に密着
平日の午後、わずか2時間だけ扉を開けるスコーン専門店がある。仕込みは朝から、閉店後には通販の発送も。それでも「もっといろんな方に届けたい」と笑う店主・長嶺さんに、お店への思いを聞いた。
「お店よりおいしいやん」が、すべてのきっかけだった
長嶺さんがスコーンと出会ったのは、趣味でお菓子や料理をあれこれ作っていた頃のこと。「これを食べた時が一番おいしいと思って、『お店よりおいしいやん』ってなったんです」。その確信が、やがて一軒のお店を動かす原動力になった。
もともとは医療系の専門学校を出て別の仕事に就いていたが、「食に関わりたい」という気持ちから転職。いくつもの飲食店を経験するなかで、食材をシンプルに生かすお店の味に影響を受けた。「こんなシンプルな味付けでこんなにおいしくなるんや、というお店にたくさん出会えて。そこがいいなって思ったんです」。
「スコンってやっぱり焼くと茶色になるじゃないですか。もっといろんな色が並ぶと、見た目が変わるかなって」
4人の子育てをしながら、朝から仕込む日々
お店を始めたのは今から約5年前。3人目のお子さんが生まれた頃で、当時は生後6ヶ月の赤ちゃんを連れて仕込みに来ていた。「授乳して、仕込みして、お昼ご飯を食べながらまた授乳して、閉店したらまた授乳して帰る」という生活だったと振り返る。今は4人のお子さんを育てながら、週末はファミリーの時間に充て、平日に仕込みと販売を行う。
生地に使うのは「ジゴナ粉」と呼ばれる薄力粉と強力粉の中間の粉。「うどんみたいにもちっとしすぎず、パサパサにもならない。なんか、しっとり収まりやすいというか」と言葉を選びながら教えてくれた。卵もバターも使わないレシピは、独学で試行錯誤を重ねてたどり着いたもの。素材の良さを最大限に引き出す、シンプルな配合にこだわっている。
季節から連想して、諦めながら、また試す
スコーンのラインナップは季節ごとに変わる。「来るたびに違うものが並んでたら、飽きられないかなと思って」。アイデアはまず季節から連想する。取材日には「次はグリーンピースを使ってみようかな」と話してくれた。春らしい緑の豆を生地に合わせる試作が、頭の中でもう始まっているようだった。
ただ、試作はいつもうまくいくとは限らない。「私、結構すぐ諦めるんです。あかん、おいしくない、って思ったら一気に離れる」と笑う。以前グリーンピースに挑戦して諦めた過去もあるが、「また試してみようかな」と懲りない姿勢が頼もしい。
スコーンの大きさも、こだわりのひとつ。「最近なんでも値上がりしてるじゃないですか。メーカーさんやったら値段そのままで中身が減ったりする。それがちょっとショックで、なるべく大きさは変えずに食べごたえのある感じにしたい」と話す。一口ごとに素材をしっかり感じてもらえるよう、具材の量も仕込みの段階から丁寧に調整している。
「つむぎ」という名前に込めたこと
屋号の「つむぎ」は、「紡ぎ」という言葉の「つ」から着想を得た。「細い糸が重なったり繋がったりすることで大きいものに仕上がっていく、というところがいいなと思って」。小さな店舗から始めたお店が、お客さま同士のご縁で成り立っていけるように、という願いが込められている。
現在の営業は平日の週3〜4日、午後1時から3時のみ。「よくこの時間に合わせて来てくださるなって、めっちゃ思うんですよ」と感謝しながらも、今年の目標は月1回の土曜営業に挑戦すること。「お勤めの方にも来てもらえたら嬉しいですね」と静かな目標を語ってくれた。
「お客さまが来られた時に『わっ』てなるような、見た目からときめくようなディスプレイにしていきたいんです」
色とりどりのスコーンが並ぶ日を、長嶺さんはまだ先の夢として描いている。でも仕込みの手は今日も動いている。細い糸を、一本ずつ丁寧に紡ぐように。
取材・文/吹田日和編集部
Instagram
https://www.instagram.com/tsumugi___scone/






