密着取材

仲良し夫婦が営む“うさぎ菓子店”に密着!かわいいだけじゃない本格お菓子の秘密

ホリ

動物をかたどったケーキ、丁寧に選ばれた素材、併設のカフェスペース。オープンからわずか1年で、記念日ケーキの注文が絶えないお店になった。製造はほぼひとり、朝7時から仕込みをはじめる藤岡さんに、菓子づくりへの思いを聞いた。

趣味のInstagramから、近所のフォロワーさんとの出会いへ

もともとはお菓子づくりが趣味で、Instagramでアカウントを運営していた藤岡さん。ある日、たまたま近所に住むフォロワーさんから「作ってみてくれへん?」と声をかけられ、初めてお菓子を渡した。「すごく褒めていただいて、ちょっと自信になって」。それがきっかけでイベント出店をはじめ、月1回ほどの小さな出店を重ねるうちに、「その場でお客さんの声を聞きたい」という気持ちが強くなっていった。

製菓の基礎は辻調理師専門学校で学んでいる。卒業後はウェディングケーキを手がける職場で、1日中クリームを塗り続ける日々を過ごした。その経験が、今のデコレーション技術の土台になっている。お店のオープンは1年前。当初はテイクアウト中心のつもりだったが、持ち帰りケーキを求めるお客さんが多く、自然とその形に特化していった。

1年かけて完成させたカヌレ。「どうせなら美味しいものを」

メニューのアイデアは、レシピ本だけでなくエッセイや漫画からも得る。「美味しんぼとか、お料理系の漫画も結構見たりして。そこから連想して試作していく感じですかね」。商品になるまでに時間がかかることも珍しくない。カヌレは完成まで1年を要した。焼き温度や時間で仕上がりが大きく変わるため、試作を繰り返した。スコーンも3種類の薄力粉をブレンドして、ようやく納得のいく配合にたどり着いた。

「夫と自分、両方からOKサインが出ないと商品にならない、という感じですね」

味の最終判断は、藤岡さん自身とパートナーの2人で行う。「可愛いだけじゃなくて、美味しくなければ意味がない」という言葉どおり、見た目のクオリティと味のクオリティを同じ基準で追いかけている。甘さを控えめにしているのも、2人ともあまり甘いものが得意でないからこそ出てきた自然なこだわりだ。

しまえなぎ、うさぎ、くま、猫。パーツはすべてフリーハンドで

お店のシンボルともいえる動物ケーキは、うさぎ・しま(しまえなぎ)・くま・猫の4種類。チョコレートを絞って作る耳や羽もすべて手作りで、ひとつひとつフリーハンドで仕上げる。しまえなぎは、藤岡さんが新卒時代に疲れて退職し、思い切って向かった利尻島でのアルバイト中に出会った鳥だ。「もう最終日にやっと撮れて、テレビみたいな奇跡が来たんですよ」と笑う。そんな思い入れのある鳥が、誕生日ケーキの主役として選ばれることが多い。

将来はパンダやアザラシなど、種類を増やしたい気持ちもある。すでに試作のメレンゲ見本を少しずつ溜めているが、「作るのとケーキに落とし込むのでは、なかなか難しい」と正直に話してくれた。バリエーションが増えるほど、チョコパーツの種類も増えて工程が複雑になる。それでも、アイデアを手放す気配はない。

近所のコーヒー屋さんと作った、うさぎブレンド

生クリームとクリームチーズは北海道産にこだわり、カヌレには近所の「千里メゾンコーヒー」の豆を使う。「すごく美味しいコーヒーで、それに負けないように美味しいコーヒーを入れないと」と勉強中だという。うさぎブレンドは、ブラジル・コロンビア・エチオピア・ルワンダの豆をブレンドしたもの。「焼き菓子に合うようなエスプレッソにしてほしい」とお願いし、打ち合わせを重ねて完成させた。お店のためだけに作られた一杯が、カフェスペースで提供されている。

「記念日にうちのホールケーキを頼みたいと思ってもらえるお店を、作っていきたいと思っています」

取材当日も、結婚30周年記念のオーダーケーキが仕上がった。「これを選んでくれるの、嬉しいですね」と藤岡さんはそっと言った。閉店1時間前には商品が完売していた。気軽に立ち寄れる日常のお店でありながら、人生の節目に選ばれるお店でもある。その両方を目指しながら、今日も朝7時から仕込みがはじまっている。

うさぎ菓子店Instagram
https://www.instagram.com/usagikashiten/

取材・文/吹田日和編集部

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