スイタビト

【スイタビトvol.006】学校に行かない日も、ひとりにしない。日野航さんが吹田でつくる、無料のフリースクール「BON PLACE」

kazuki

「友達の家みたいな感覚で、使ってほしいんです」

決まった時間割も、毎日通うという決まりもない。ゲームをしても、誰かと話しても、自分のペースでゆっくり過ごしてもいい。

吹田市内の3拠点で活動する「BON PLACE」は、利用料無料のフリースクールです。子どもたちの居場所づくりとともに、保護者からの相談も受け付けています。

理事長を務めるのは、自身も小学3年生から中学3年生まで不登校を経験した、日野航さん。

なぜ、時間割をつくらないのか。なぜ、無料で続けているのか。そして、かつて苦手だったという地元・吹田で、今はどんな未来を思い描いているのか。

日野さん自身の歩みと、子どもたちの居場所に込める想いを伺いました。

NPO法人BON PLACE 理事長・日野航さん。
自身の不登校経験を原点に、子どもたちの居場所づくりに取り組んでいます。

1. 学校に行けなかった自分が、居場所をつくる側になるまで

——まず、日野さんご自身の不登校経験について教えてください。

日野さん:
僕は小学3年生のとき、いじめがきっかけで学校に行けなくなりました。フリースクールなどには通っていなくて、基本的にはずっと家にいましたね。

ほとんどベッドから出られない「寝たきり」のような時期もありまし、たまに元気がある時は夜に公園へ出て遊ぶこともありました。

学校に行かなくなり出してから最初の方は親も、なかなか不登校を受け入れられなかったと思います。「将来どうなるんだろう」「この子は大丈夫かな」という心配があったと聞いています。

——そうだったんですね。そのような状態から外に出られるようになったと言いますか、BON PALCEみたいな活動をしようと思い立ったキッカケのようなものは何かあったのでしょうか?

日野さん:
中学3年生になって、その先を考え始めたことが最初のキッカケだったかもしれないです。

当時は学校そのものが嫌だったので、高校には行かずに働こうと思っていました。でも、自分なりに仕事を調べても、なかなか自分が働く姿をイメージできなかったんですよね。

そんなときに、毎日通わなくてもいい通信制高校があると知りました。最初は「ひとまず所属しておこう」くらいの気持ちだったんです。

ところが、入ってみたら同級生約30人が、みんな不登校を経験していた。

「自分みたいな人が、こんなにいるんや。それが当たり前の場所があったんや」

というのは、すごく衝撃でした。

それまでは、学校に行っていない自分はダメなんだと思っていたんです。でも、同じような経験をした同年代が実は自分以外にもいて、今のままの自分を受け入れてもらえる。その安心感で、めちゃくちゃ気持ちが楽になりました。

高校では、卒業に必要なカリキュラムは一応クリアした程度でむちゃくちゃ遊びましたね(笑)。

——なるほど。そのような自分と似た境遇の同年代と出会えた経験から、フリースクールという「居場所づくり」を始めようと思ったんですね。

日野さん:
そうですね。高校生のタイミングで「こういう場所が、小学生や中学生のときにもあったらよかったのにな」と思うようになりましたね。

ただ、最初から卒業後に活動を始めると決めていたわけではなくて。高校3年生のときは大学進学を目指して、かなり勉強していました。でも、受験に失敗してしまったんです。

浪人しようかなとも考えましたが、少なくともその年は大学に行かない。だったら、高校生の頃からやってみたかったことを、仕事にしてみてもいいんじゃないかと思いました。

本当に見切り発車でしたね。

同じ高校の同級生2人に声をかけて、最初は3人で始めました。2人は大学に通いながら、僕はこれを仕事にしていくつもりで。寝屋川で場所を借りて、アルバイト代で家賃を払っていました。

BON PLACEは2021年に任意団体として活動を開始し、2024年にNPO法人化。「自分が欲しかった場所」をつくるという想いが、活動の出発点になっています。

2. 時間割も月謝もない。「友達の家」のようなフリースクール

公演でお話をする日野さん

——改めて、BON PLACEはどんな場所なのでしょうか?

日野さん:
学校に通っていない、あるいは通うことが難しい子どもたちにとっての、家と学校以外の居場所です。

ただ、僕は「学校に戻すための場所」とも、「学校には戻らないための場所」とも決めていません。

ここに来て休んで、また学校に戻る子は戻ったらいい。ここにいたい子は、いたらいい。どちらかを正解にするのではなく、その子のスタンスに合わせて関わっています。

——時間割やカリキュラムもないそうですね。

日野さん:
最初から、つくっていません。時間で区切らないし、やることも決めない。その子が来て、その日に何をしたいかを決めるスタイルです。

学校に行けない理由を聞かれても、うまく説明できない子はいます。学校のカリキュラムが合わないのか、人間関係でしんどいのか、自分でもまだ言葉にできないことがある。

だから、ここでも同じように「この時間には、これをしてください」とはしたくないんです。

——実際には、子どもたちは何をして過ごしているんですか?

日野さん:
ゲームが多いですね(笑)。Switchやタブレットを持ってきて、一人で遊んだり、友達と遊んだりしています。

そこから、ゲームを通して仲良くなるんですよ。3、4人で集まって、一緒に遊ぶようになったり。

僕がまず大事だと思っているのは、人とつながれる場所があることです。

学校に行かなくなると、日常的に人と会う機会がなくなってしまう子もいます。僕自身、小学生のときは誰ともつながれなかった。

勉強ももちろん必要です。でも、その前に、一人でもいいから、遊べる相手や相談できる相手、日々しゃべれる相手を見つけてほしいんです。

——通う頻度も、自分で決めていいのでしょうか?

日野さん:
もちろんです。2、3カ月に1回来る子もいれば、年に数回来る子もいます。反対に、開いている日は毎回来る子もいます。

行く日も行かない日も、基本的に連絡はいりません。初めてのときも、事前連絡なしで来てもらって大丈夫です。不安だから先に連絡したいという方は、もちろん連絡してもらってもいい。

ほんまに、友達の家みたいな感覚で使ってほしいですね。

活動場所は曜日ごとに変わります。僕たちのイメージはモンゴルの遊牧民みたいな感じですね笑

僕らがその日にゲルを建てたら、そこに子どもたちが来る。次の日は別の場所へ移動して、またそこに集まる。そんなイメージです。

一つの建物に通い続けるのではなく、その日の活動場所で、いつもの人たちに会う。そんな居場所の形です。

無料であることも、自由であるために

経済的な負担を減らすだけでなく、フリースクールに通うこと自体が親子の新たなプレッシャーにならないようにする想いもあり、BON PLACEは、活動開始以来、利用料を受け取らずに運営しています。

費用を払っていることが、本人の気持ちよりも「通うこと」を優先する理由にならないように。その子に必要な過ごし方や次の一歩を応援するための、無料という選択です。

また、日々の居場所に加えて、キャンプや釣り、ワークショップなどの体験活動も行っています。こうした活動への参加も自由で、普段とは違う体験に触れる機会を用意しています。

<写真:子どもたちが過ごす室内や活動風景])
キャプション:決められた時間割はなく、その日の過ごし方を自分で選べるBON PLACE。

3. 「学校に行きたくない」と言えた、その先に

——子どもから「学校に行きたくない」と言われたら、保護者は戸惑いますよね。子どもからそのようなサインがあった場合、BON PALCEさん、もしくは日野さんにはどの段階で相談していいのでしょうか?

日野さん:
僕は、そういう言葉が出た段階で、相談してもらっていいと思っています。

子どもって、学校に行きたくないと思って、すぐに親へ言えるとは限らないんです。自分でも学校に行くのが当たり前だと思っているし、親に言ったら否定されるかもしれない、という怖さもある。

だから、我慢して行って、もう無理だと思ったときに、ようやく言える子もいます。

でも、親御さんからすると、その日が初めて聞いた日なんですよね。「急に行きたくないと言い始めた」「もう少し頑張れるんじゃないか」と思うこともある。

子どもにとっては、やっと言えたところが一つのゴール。でも、親にとってはそこがスタートになる。そのギャップで、お互いにしんどくなることがあるんです。

「行きたくない」と言えたときには、すでにかなり頑張ってきた可能性がある。

そのことを知っているだけでも、受け止め方は変わると思います。

——子ども本人がまだ外に出られなくても、保護者だけで相談できますか?

日野さん:
できます。実際に、まず保護者の方だけ来てもらうことも多いです。そこで、じっくりお話を聞いています。

オンラインでも大丈夫ですし、Instagramやホームページから連絡してもらえたらと思います。

通うと決めてから相談する、という順番じゃなくていいんです。

子どもを連れていけるようになるまで、相談を待つ必要はありません。公式の相談窓口でも、保護者だけの相談や、まだ何も決まっていない段階での問い合わせを受け付けています。

4. 子どももスタッフも、自分の次の一歩へ

——活動を続ける中で、印象に残っている子どもたちの変化はありますか?

日野さん:
1年以上通ってくれていた子たち4人が、通信制高校へ進学しました。それぞれ高校に通っていて、アルバイトを始めた子もいます。

短い期間だけ関わった子の進学を聞くことは以前にもありましたが、長く一緒に過ごしてきた子たちが次の場所へ進んだのは、印象に残っていますね。

——子どもたちだけでなく、スタッフ側にも変化があるそうですね。

日野さん:
そうなんです。大人になってから、まだ働けていないとか、家にいる時間が長いという相談を受けることもあります。

そういう人に、「子どもと遊ぶところから来てみない?」と声をかけて、スタッフとして関わってもらうことがあるんです。

すると、半年や1年くらい経って、「やりたいことが見つかったので、専門学校へ行ってきます」と言って、次の場所へ進んでいく人がいる。

子どもから学ぶことって、僕らにも山ほどあります。それをスタッフ自身が実感しているんだと思います。

嬉しいんですけど、「人足らんやん、もう1年いてくれ!」とも思いますね(笑)。

——(めっちゃええ話やん)

誰かを支える側も、関わりの中で自分の次の一歩を見つけていく。日野さんの話からは、BON PLACEが子どもだけでなく、関わる大人にとっても、人と出会い直す場所になっていることがうかがえます。

5. 苦手だった吹田が、「悔しいぐらい好きな街」に

——今回「スイタビト」の取材ということで、吹田との関わりについても伺いたいです。地元で活動しようと思った理由は何だったのでしょうか?

日野さん:
実は、最初は絶対に吹田でやりたくなかったんです。

地元に苦手意識がありました。小中学校に行っていなかったので、同級生も会いたい相手というより、どちらかというと怖い相手だったんですよね。

しんどい期間が長かったこともあって、自分の中で、地元全体が苦手になっていたところがありました。

でも、僕は自分の中にマイナスのまま残るものを、あまり残したくもないですし、つくりたくもないんです。

大人になってから、もう一度ちゃんと地元を見てみたらどうだろう。そこで自分で何かを始めたら、感じ方も変わるんじゃないかと思いました。

それで、寝屋川で2年間活動した後、3年目から吹田へ戻ってきました。

——実際に戻ってきて、吹田の見え方は変わりましたか?

日野さん:
やればやるほど、悔しいぐらい好きになっています(笑)。

それまでは、自分も地域のことや人のことを、ちゃんと見ていなかったんですよね。それを一から見つめ直して、関係をつくり直してみたら、意外といいところだった。

今は、吹田から出る気がなくなるくらいです。

——これから、吹田がどんな街になっていったらいいと思いますか?

日野さん:
教育の分野で、行政と民間がもっと連携できたらいいなと思っています。

行政もいろいろな取り組みをしているし、民間にも子どもたちを支えている場所があります。

それぞれが別々にやるだけじゃなくて、みんなで子どもたちのことを思って、一緒にやっていけたら。そうなったら楽しいなと思いますね。

<写真:笑顔で話す日野くん/できれば交流してる写真?>
キャプション:活動を通じて人と出会い、かつて苦手だった地元の見え方も変わっていったと話す日野さん。

6. この居場所を続けていくために

日々の活動を支えているのは、学生を中心とした約20人のボランティアスタッフ。子どもたちと過ごす人だけでなく、運営の裏方として関わる人もいます。

取材では、会計やITなど、仕事で培った専門スキルを提供する「プロボノ」の形で参加している社会人の話も聞かせてくれました。

「プロボノ」とは

仕事のスキルや経験を活かしてNPOや地域団体を無償で支援する社会貢献活動です。現在のHPもWEB系の知識があるスタッフさんが作ってくださったそうです。

——今、活動を続けるうえで一番の課題は何でしょうか?

日野さん:
人と、お金ですね。

子どもたちから利用料はいただいていませんし、今の活動場所も、ご厚意で場所代や光熱費がかからないところをお借りしています。

ただ、持続的に子どもたちを支えていくためには、常勤のスタッフを置けるようにしたい。そのための資金が必要です。

子どもたちにとって、どんな大人や学生と関わるかは、すごく大事なことだと思っています。人生が変わるくらいの出会いになることもある。

だから、人に対するお金を、これからしっかりかけていきたいんです。

——地域の人たちは、どんな形で応援できますか?

日野さん:
子どもと関わるボランティアも、知識や経験を活かしてくれるプロボノの方も、募集しています。

それから、個人や企業からの寄付、毎月継続して支えていただくマンスリーサポーターですね。

例えば、毎月500円でも100人が応援してくれたら、できることは変わってきます。子どもたちに用意できることも、スタッフの確保の仕方も変わる。

活動をバックアップしてくださる方がいたら、嬉しいです。

吹田日和も応援中! 自分にできる形で、居場所づくりに参加する

BON PLACEへの寄付は、公式サイトで案内しているオンライン寄付サービス「Syncable」または銀行振込から行えます。企業による寄付・協賛、物品提供、イベント連携の相談も受け付けています。

ボランティアは、資格や経験の有無を問わず応募可能。まずは話を聞いてみたいという段階でもよく、面談を通じて関わり方を相談できます。

子どもたちと一緒に過ごす。得意なことで運営を支える。寄付で活動を応援する。

自分にできる関わり方から、吹田の子どもたちの居場所づくりに参加してみてはいかがでしょうか。

7. 編集後記

今回の取材で印象に残ったのは、日野さんが「学校に戻ること」も、「BON PLACEに通い続けること」も、一律のゴールにしていないことでした。

まずは、日々しゃべれる相手がいること。一緒に遊べる人がいること。そして、その子が自分のペースで過ごせること。

時間割をつくらないことも、通う頻度を決めないことも、利用料を受け取らないことも、その想いにつながっていました。

もう一つお話を聞けて良かったなと思った部分は「悔しいぐらい吹田が好きになっている」というお話です。

かつて自分が居場所を見つけにくかった街で、今は誰かの居場所をつくっている。その中で、日野さん自身も街との関係をつくり直してきたのだと感じます。

「今日は学校に行けない」という日に、家と学校だけではない選択肢がある。

そんな場所が吹田にあることを、必要としている子どもたちやご家族に、少しでも届けられたらと思います。

(取材・文・写真:吹田日和 副編集長 金子和樹)

8. インフォメーション・プロフィール

日野 航さん

NPO法人BON PLACE理事長。吹田市出身。小学3年生から中学3年生まで不登校を経験し、通信制高校で同じ経験を持つ仲間と出会う。2021年に任意団体としてBON PLACEの活動を開始し、2024年にNPO法人化。自身の経験を原点に、子どもたちの居場所づくりに取り組んでいる。

BON PLACEの利用案内

以下は、2026年9月に確認した公式サイトの掲載情報です。 対象は小学1年生から高校3年生まで。利用料・参加費・登録料は無料で、予約や入会手続きも不要です。

拠点開催日時所在地
ゆずりは毎週火曜日 13:00〜16:00吹田市片山町1丁目4-7
さたけん家毎週水曜日 10:00〜15:00吹田市佐竹台2丁目5-5
片山ピース毎週木曜日 10:00〜18:00吹田市片山町3-7-10

開催日時・所在地は公式の利用案内に基づきます。開催日が変更になる場合があるため、訪問前に公式Instagramで最新情報をご確認ください。見学だけの参加も可能です。なお、途中で帰宅する場合は、保護者のお迎えをお願いする旨が案内されています。

相談・問い合わせ
保護者だけの相談も可能です。メールまたは公式Instagramのダイレクトメッセージから連絡できます。

項目内容
団体名NPO法人 BON PLACE
公式HPhttps://bonplace.org/
公式Instagramhttps://www.instagram.com/bonplace_/
メールbonplace.official@gmail.com
寄付・支援公式サイト内「寄付で応援する」から
ボランティア公式サイト内「ボランティア募集」から
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